異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
風が、そよとも吹かない。
限界ギリギリまで引き絞られた、緊張という名前の糸。
それが切れたきっかけは……。
川面で魚が跳ねた、音だった。
『はっ!』
まず先制したのは、ライネス皇子だった。
広い刀身を使い、休みなくティオンに打ち込む。
明らかに巾や重さがあるそれを、ライネス皇子は軽々と振り回してた。
ティオンはライネス皇子の打ち込みを、全て軽く受け流してた。
とはいえ、ジリジリと後退しているように見える。
劣勢に見えたティオンが反撃に出たのは、ギリギリまで耐えてからだった。
身体を捻ってライネス皇子の剣の軌道を変化させる。
ドス、と軽快な音を立てて皇子の剣の刃が脇の樹の幹に食い込んだ。
そこに、ティオンの剣が一閃。身体を仰け反らせ、ギリギリで避けたライネス皇子。そのまま剣の柄を掴み力づくで剣を横薙ぎにすれば。
30センチはあろう樹の幹がすっぱりと横に斬れていた。