異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
……あたしが慕われてる?
「どこが? こんな地味で何の取り柄もない、あたしなのに」
『自己評価が低く、すぐ自分を卑下する。君の悪い癖だよ』
ティオンはいきなり馬から降りると、愛馬の鬣を軽く撫でて手綱をあたしに持たせた。
「あたし、まだ一人で十分乗りこなせないけど」
『大丈夫。エクリプスは頭がいい牝馬だから、そのまま座ってるだけで十分だよ』
ポン、とティオンが愛馬の首を叩けば、エクリプスは並足で進み出す。
『自分の目で見ておいで。周りから見て自分がどう思われているか』
ティオンは訳のわからない事を言いながら、あたしを先に進ませた。
(どう思われているかなんて決まってる。ああいたわね、程度で……すぐに忘れ去られるどうでもいい存在なんだから)
きっと、この力が無ければ誰にも認められやしなかった。あたし本人なんて、ただのオマケ。付属品に過ぎない。
しかも不十分な欠陥品だ。
満足に役割も果たせず、逆に手を煩わせる。
そっと涙を拭った。