異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
『それにしても、ユズが添い役の姫を引き受けてくれるとは思わなかったよ』
予想外とティオンの言う通り、あたしはギリギリまで迷ってた。添い役の姫をやるかどうかを。その役割の本当の意味を聞いて、かなり決心がぐらついた。
……でも。
「あたしがやらなかった場合……他の姫が候補に挙がってたんでしょ?」
『まあね。プタハ伯爵家の令嬢フレア姫、ハーメア王国王女カーリー内親王、プライ王国公爵令嬢ウオッカ姫』
……どれもこれもあたしが太刀打ちできない高貴な身分だ。
本当に、よかったんだろうか?
「ティオン」
「ん?」
「……本当に……よかった? あたしなんかで。何の身分も力も持ってないのに」
新年祭で行われる、王族の成人の儀式で添い役を務める。それは、ただ単に役割を果たすだけじゃない。
国内外にその人の婚約者だ……と知らしめる意味合いもある。
その添い役の人は無論、後に生涯を共にする場合が多い。
そうすると、力を持つ人が相応しいのは当然だ。生家が伴侶の後ろ楯となるのだから。