異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
『ユズ、僕は言っただろう。君だから望むんだって』
「でも、後悔しない? あたしのわがままを聞き入れちゃって」
『ああ……』
ティオンは椅子から立ち上がると、あたしの側に来て袖のレースを摘まんだ。
『綺麗な生地だ。君に相応しい繊細な織りで……急がせた甲斐がある』
そして、その手がすかさず肩を抱こうとするから、右手で思いっきりつねっておいた。
『添い役の宣誓も何もかも仮だって言ってたこと?』
目にうっすら涙を浮かべたティオンが、いつもより痛いよと言いながら確認してきた。
「……うん。あたし……まだ自分の気持ちが全部解らないから。卑怯かもしれないけど、答えを出すのはもう少し後にしたい」
ディアン帝国皇子のライネス皇子に指摘され、自覚した初めての気持ち。
これを伝えてしまえば、何もかも変わってしまう。そして、帰れなくなる恐れがあって、どうしても決心がつかない。
それに。今までの疑問が全て解決した訳じゃない。
あたしはどうしても確かめたいことをティオンに問おうと口を開いた。