異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
「ティオン、幾つか訊きたい事があるの。このままだとあたし、とてもじゃないけど新年祭を迎えられないから。すっきりさせておきたいの」
思い切って切り出す。はっきり言えばセイレスティア王国の機密にも触れる話だから、ここで言って良いものか。
けど、これから1週間後の新年祭本番まで、ティオンと話せる保証はない。ならば、このチャンスを生かさなきゃ。
『それは、とても重要な事かな? 僕が答えなければ、逃げたくなるくらいには』
あたしはティオンを見つめたまま、ゆっくりと頷く。すると、彼は真顔になり、侍女長のミルミさんに視線で合図をする。
心得たもので、ミルミさんを始めとした侍従や侍女は全て退室して、後に残されたのはあたしとティオンだけになった。
『君は一方的にここに連れて来られたんだからね。知る権利はある。僕に分かる範囲で何でも答えよう。話してごらん』
「じゃあ訊くけど……ティオン、あなたはあたしを拐ったの? ディアン帝国の召還の儀式を利用して、あたしを横取りしたみたいに聞いたわ」