異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



「そんなに卑屈にならなくてもいいっしょ! 男はあんなのばっかじゃないよ」

鈴華は下世話な話をする男子高校生を白い目で見ながら言う。

わかってるよ、とあたしは小さく呟く。

男だって千差万別。千人いれば千通りの性格や性質を持ってる。恋人と幸せそうに笑う鈴華や姉を見てたし、一概に男を否定するつもりはない。


……でも。


やっぱり忘れられない。


暗闇に浮かんだ銀色に輝く刃。それが向かってきた恐怖と感じた焼けるような痛みを。


「……ごめんね」


あたしが俯いて謝ると、鈴華もため息を着いて「あたしこそごめん」と謝ってくれた。


「ゆずもせっかく女の子に生まれたんだから、その幸せを感じて欲しかったんだ。けど、無理強いしてなるもんじゃないよね。アンタ自身がなりたいと思わなきゃ意味ないもん」

鈴華の思い遣りのある言葉が、胸に突き刺さる。

変わらなきゃ、と考えたことはない訳じゃない。コンプレックスだってあって……あたしは自分が嫌になっただけ。

だから、あたしは小さくありがとう、と鈴華にお礼を言った。


< 13 / 209 >

この作品をシェア

pagetop