異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
『別に、いいよ』
ティオンの背負う空気が変わった気がした。
今までみたいな親しみ易さはなく、どことなくよそよそしい。
『それを聞いたなら、ライベルトの事も知ったはずだね』
ティオンの指摘に、話さなきゃよかったと後悔し始めた。
2人を仲違いさせるために、こんな話をした訳じゃない。ただわだかまりを解消したかっただけ。
なのに。これはまるで……。
「ライベルトが、なに?」
『彼が、裏切った……って。聞いたし、見たよね? 市場で』
「………」
答えたくなくて、黙って俯いた。それは肯定も同然かもしれない。けれど、自らライベルトを裏切り者だと糾弾するつもりはない。
『君も聞いた通りに、ライベルトは確かにディアン帝国の皇子で、このセイレスティア王国の王族の血も引く。
だが……ライベルトがこの国に帰化したのは、母君が皇帝と離縁し帰国なされたからだ。
皇族の血を引くライベルトは、争いの種になりたくない、と自ら臣籍降下をし、王国に仕える道を選んだんだ。裏切るなどあり得ない』