異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
太陽が昇り、新しい年の到来を告げる新年祭が始まった。
セイレスティアではお正月のようなもので、国をあげて新年をお祝いする。
国王夫妻が臨席するお祭りのメインイベント。今回はティオンの成人の儀が執り行われるから、華やかさや賑わいが段違いらしい。
国教正教会の控え室で、あたしはガチガチに固まってた。
あああ……ダメだ。昔から本番には弱かったんだよね。
人の字を手のひらに書いて飲み込む。もう百回はやってお腹一杯です……。
『ユズ、よかったらカナン茶でも飲む? 友達が送ってくれたの。緊張を和らげるんだって』
キキはあたしの緊張を解そうとしてあれこれしてくれるけど、あいにくとどれも効き目がない。
だけど、あたしを思いやってしてくれる優しさを無下にはできなくて、お願いした。
「そ、そうね。ちょっと試してみようかな」
『じゃあ、ちょっと淹れてきますね!』
パタパタと急いで厨房に走るキキを見送り、ため息を着いていると。
いきなり、口を塞がれた。