異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



『しいっ! ユズ、僕だよ』


「……って、ティオン! 何をしてるのよ。儀式の主役が抜け出していいの!?」


聞こえてきたのはティオンの声で、あたしは呆れるやら驚くやら。緊張なんてどこかに吹っ飛びましたよ。


『ユズの姿を一番最初に見たくてね』

「仮縫いとか試着とか、散々見たでしょう。仕上がりに文句を着けて、完成を遅らせたのはどこのどなたでしたっけ?」


そうなんだ。


ティオンはドレスに関わりがあると、どんなに忙しくても時間を作って見に来たんだ。


そのたびにあれこれいちゃもんを着けるから、結局ドレスの完成は今朝になっちゃったし!


『そんなにツンツンしないでくれよ。君に着てもらうなら完璧なものにしたかっただけなんだから』


そして。

ティオンは、本領を発揮した。


『……やっぱり、思った通り。いや、予想以上に綺麗だよ、ユズ。他の誰にも見せたくないくらいだ』


ドキン、と心臓が跳ねた。


おろした黒髪を指ですくわれ、そのまま口付けられて。


かあっ、と顔が熱くなる。


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