異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
『……ユズ』
ティオンが椅子に座るあたしを腕の中に閉じ込めた。
かつてないほど顔が近づき、彼の綺麗な瞳を見てると……頭がのぼせたみたいにぼうっとなった。
全身が、心臓になってた。
顔が、熱い。思考が乱れる。
『ユズ、僕のものになって』
熱を孕んだ、蠱惑的な瞳。艶やかな唇で吐かれる甘い毒は、あたしを侵し思考を麻痺させる。
「……ティ……オン」
『ユズ』
ティオンの熱い吐息を、唇に感じた。
『僕の、妃になって。僕は君以外要らない』
「ティオ……っ」
ふわり、と唇をかすめたのは、熱く優しい、なにか。
哀願にも似た切ない響きは、いつまでも止むことは無かった。
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