異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
薄いアイボリー色の大理石で造られた部屋。警備用の結界は言うに及ばず、種類毎に保管に適した温度や湿度に光の調節がなされた室内。
父はその辺りに拘っていたから、専任の芸術に関する官の知識を総動員して造り上げた宝物庫だ。幾つかの部屋に分かれたそれのうち、既に目星を付けた部屋に向かう。
けれど、父上も流石に僕のことを見抜いてらして。二重に配置されていた魔術による警備で警備兵だけでなく、魔術師にも追われる形になった。
「だからお止めなさい、と言ったんですよ!」
ライベルトにまで怒られながら、間近に迫った警備兵から逃れるべく僕は間近な部屋に飛び込んだ。
小さくて薄暗いそこは様々なものが積み上げられていて、足の踏み場もない。それでも僕を呼ぶ声が近づいて来たから、ライベルトと別れて隠れる。咄嗟に選んだのは近くの大きめな木箱で、すぐに入って蓋を閉めた。
ちょっとカビ臭いそこでジッとしているのは大変だったけれど、ふと気付いた。暗やみの中で何か光っている……と。
(何だろう? 光る虫でもいるのかな)
興味を持った僕は、当然手を伸ばす。淡い緑色の輝きに手を触れると、不思議とホッと出来た。
(腕輪……?)
それは、緑色の石で出来た腕輪だった。僕が触れるとなお一層光を強くし、輝いている。ほんのりと暖かくすらあったし、しっくりと肌に馴染む感触があった。