異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



“言霊”という古の術は魔法に近いものがあるけど、使い手はとうに絶えて久しい。だから、僕も使い方は分からなくて四苦八苦した。


時折近づいて来る魔術師や警備兵を魔法で何とかやり過ごしながら、憧れのお姫様と関わりを持ちたい一心で頑張った。


そして、遂に秘宝を動かすことに成功した。


目の前に――というか自分の意識に広がるのは、今いる部屋とは明らかに違う光景。ここはどこだ、なんて考える間もなく判る。僕が寝起きしてる自室だったから。


どうやらこれは、離れた場所の出来事を見聞きできるものらしい。


そして部屋では僕付きの侍女が家庭教師役の伯爵にお茶を出し、謝罪しているところだった。


「申し訳ありません、ラファエット伯。ティオンバルト殿下はいつも気まぐれで」

「はは、仕方ありませんよ。殿下は本当に活発で、お健やかに育たれて何よりです」


伯爵は穏やかにそう言ってティーカップを手に持ち口を着けている。


(なんだ、全然困ってないじゃないか。ラファエット伯爵を困らせるにはこれじゃ足りないのかな)


僕はそんな風に全然懲りもせずに、伯爵をどうすれば困らせるか……なんてことを懸命に考えていたのだけど。


そのうちに、侍女達がひそひそと内緒話を始めたからそちらに気を取られて。


その中で、耳を疑いそうな言葉が漏れ聞こえてきた。


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