異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
「どうせおまえも僕を妾の息子ってバカにしてるんだろう!出てけ!出てけったら!!」
僕は何か言いかけたライベルトを無理やり部屋から追い出し、内側から鍵を掛けて閉じ籠った。
「みんな、みんな……大っ嫌いだ!」
部屋の片隅で膝を抱えた僕は、肩を震わせむせび泣いた。
安穏と過ごしてきた日常が偽りで、それは自分に相応しいものじゃなかった。母上も兄上達も心底お優しいから、愛妾の息子と言っても差別しなかったんだろう。その優しさが今は逆に惨めに思えた。
夢を、見たかった。
僕がちゃんと父上と母上の子どもで、大好きな兄たちの本当の弟だったって。
現実は冷徹で容赦ないから、せめて夢の中だけでも幸せな微睡みで居たかったのに。何度目覚めても、僕の肌は白いままで髪の毛の色も瞳の色も変わらない。
――みんなと同じ色に染まりたいのに!
僕は、窓を開けて庭に出ると、庭園の土を自分の肌に塗った。
(嫌いだ。嫌いだ。大っ嫌いだ! こんな白い肌なんて、輝く髪なんて要らない!!)
ライベルトや侍従に止められるまで、僕は全身砂や土を浴び続けた。それでも生まれは変えられなかった。