異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
「わあっ! キレイなお兄ちゃん」
えっ、と驚きを感じた。
泣きながら部屋で寝入ったはずなのに。気付けば明るい陽射しの中で、草原のお花畑の中にいて。そして目の前に一人の女の子がいたから。
その女の子は肩までの黒い髪をしていて、黒い瞳で僕を見上げてる。肌は黄色系……東方の人間だろう。 服は見たこともない上下に分かれた体にフィットするデザインだ。
「お兄ちゃん、すっごくキレイ! 絵本に出てくる王子さまみたい」
その女の子はにこにこと屈託のない笑顔で僕を褒めるけれど、僻み根性が染み付いた僕は素直に受け取れない。
「僕は……キレイなんかじゃない。汚いんだ。要らない存在なんだよ」
そう言いながら彼女の笑顔を受け取る自信がなくて、目を逸らし膝を抱えて座り込んだ。
どんなに明るい光も僕を浮き立たせないし、暖かな陽射しでも凍った心を溶かすことはない。上辺だけの慰めなんて虚しいだけだ。
僕はそんな醒めた気分で花が風に揺れる様をぼんやり見ていたのだけど……。
唐突に、目の前が真っ暗になった。
「わっ……な、何!?」
驚いて声を上げると、背後からクスクスと笑い声が聞こえる。目の辺りに柔らかな感触とぬくもりを感じた。
たぶん、さっきの女の子のイタズラだろう。腹が立った僕は顔を覆うそれを剥がそうとしたけど。
「こうすれば、汚いもキレイもないでしょ? 見えないんだから」
女の子のそのひと言に、思わず手が止まった。