異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
「はは……やっぱりね。僕はこんなものがお似合いか」
僕は、真っ黒な石を握りしめ乾いた笑い声を上げた。
炭みたいな真っ黒な色の石は、お世辞にも綺麗とは言えない。もう一つの石は澄みきった水の様に輝いているのに。
……僕の人生そのものじゃないか。
そんなふうにやさぐれた僕だけど、女の子は目の前でしゃがんで僕をジッと見つめる。何が可笑しいのか、クスクスと笑うからカチンと来て睨み付けた。
「何がおかしいの? 僕をからかって楽しいってわけ?」
「それ、同じものだよ」
僕の棘のある言葉をスルーした女の子は、手のひらに載せた黒い石と透明な石を指さしてそう教えてくれた。
「は?」
僕は、信じられなくて再び目を瞬かせる。
「黒いのは黒水晶(モリオン)って言うの。白い方は水晶(クォーツ)。どっちも同じ石英って種類の石で、色が違うだけ。
水晶はたくさんあるから価値があまりないけど、これだけ真っ黒な天然の黒水晶はとっても珍しくって。とっても価値があるんだってお父さんが言ってたよ。水晶はヒャクエンで買えたけど、黒水晶はこれでジュウマンエンしたって言ってた」
ジュウマンエンとかの単位はよく知らないけれど、どうやらとんでもない価値があるようだ。信じられない思いで手のひらの黒い石を見つめる。
……2つが全く同じもの。
違いは色だけ……か。
何だかバカらしくなって、自然と笑いが込み上げてきた。