異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
それから僕は、がむしゃらに努力をした。
今までどんなに苦手だった勉強も熱心に取り組んだし、武術の修得も懸命にした。
けれど、どんなに頑張っても兄上達どころかライベルトにも敵わない。それは結構堪えたが、ライオネル兄上もアレクシス兄上も僕を気に掛けていて。時間があれば勉強を見てくれたり訓練に付き合って下さった。
僕自身も自分の器を漸く自覚していたけれど。これだけ分け隔てなく可愛がって下さる兄上達を将来的に支えたい、という微かな気持ちが湧いてきていて。
毎日毎日くたくたになり泥の様に眠った……とは言い難い。 実際にはこの頃から悪夢を見るようになってきていた。
ライオネル兄上やアレクシス兄上達がおっしゃってらした【闇】による悪影響で、僕の睡眠の質は途端に落ちた。どころか眠るのが怖くなるほど、悪夢は僕の潜在意識に侵入していく。
悩んだ僕はもちろん兄上達を始めとしていろいろな方面で相談したが、決定的な対応策がないまま僕はひたすらユズとの再会を待っていた。
そんな状態が続いて数年後。ディアン帝国での戦闘の際――兄上達は僕を護る為に落命された。
“お前はユズと会わなきゃいけないんだろ”
“ティオンはお姫さまが待ってんだから、ここで死んではいけない”
はからずも僕を支えてくれた存在が兄上達を失うきっかけになったなど、信じたくはなかった。
けれども。兄上達の想いを無駄には出来ない、と僕はますますユズを求める気持ちを深めていった。