異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
そしてあの日から8年後。
先の戦争で辛うじて勝ったものの、戦で疲弊した国に天候不順による凶作という不運が重なった。
内陸国ゆえに農業が主幹産業であるセイレスティア。当然貿易も農産物が占めているが、このままでは食糧難に加え収入の激減により飢餓は免れず、国民の5人に1人が餓死するという有り難くない予測すら出た。
無論、出来る限りの手は尽くした。それでも状況は良くならずむしろ悪化するばかりで。
近隣の諸外国も支援をする余裕はない。かといってディアン帝国に助力を請う訳にはいかなかった。
全く情けない。ユズに逢うために努力してきたのに、僕は何の役にも立てないのか。
(兄上だったらどうするだろうか)
今は亡きライオネル兄上とアレクシス兄上。2人を思い出し懸命に対策を考えた。
八方塞がりで行き詰まり、宮廷が重苦しい空気に包まれる中で。僕は父国王に直訴した。
“伝承の姫を召喚する許可をください”――。
どの国の神話にも語られる、創世の言霊の力を持つ乙女。
父は最初、疑わしい目で僕を見た。ライオネル兄上が僕のした事を話してないから、父は僕の魔術師としての実力を知らない。
それに。
伝承の言霊の姫は、あくまでも伝説や神話で語られる架空の存在と思われている。それは仕方ない。セイレスティアが建国されて千年経つが、誰一人として彼女を見たことがないのだから。