異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
ふわり、と吹いた風が薫った。
今は11月。空気は冷たいけど、日が当たっていればぽかぽか暖かい。
屋上から眺める町並みはよくも悪くも、日本の一般的な地方都市そのもの。取り立てて有名な場所もなく、かといって極端に治安が悪い訳じゃない。
あたしが生きるには十分だ。
柵越しに遠くに見える白く輝く水平線を眺め、鉛筆とスケッチブックを持ちながらため息をついた。
「あたしだって……本当は」
誰もいないから、吹く風に乗せる為に呟く。千切れて消える泡沫のような、現実感のない言葉を。
「可愛くなって……大好きな人がいて……幸せになりたい。自分だからって胸を張って生きたいよ」
でも、現実は厳しい。
あたしが普通にお洒落をすれば、モデルの姉と絶対に比べられる。自分がどれだけ平凡で地味な顔立ちかは解ってる。
お正月に親戚で集まった時、晴れ着を着たあたしに男の子達はブスとからかってきた。お姉ちゃんとは違い貰われっ子とはやされた。
大人達も陰口であたしが可愛くないと言ってて。姉ばかり贔屓されたんだ。