異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
番外編~たぶん、甘いひととき。
「う~~ん……」
ある日の夜、キキも下がらせた後。離宮に割り当てられた部屋のテーブルで、あたしはとあるものを前に、腕を組みながら考えてた。
考えて……
考え……
…………。
……気がついたらそのままグースカ寝て、朝を迎えてましたよ。
☆
「ユズったら、何をそんなに悩んでるの? 昨日からずっとじゃない」
今日も今日とてお作法の勉強から逃げて厨房にいるあたしに、キキが呆れた顔を向けてきた。
そりゃあ、腕を組みながら般若みたいな顔をしてジッと動かなきゃ怖いわな。
たまたま遊びにきた料理長の3つになる娘さんが、“お化け怖い”と30分間大泣きするくらいには。
…………。
た、たぶん気のせいだよ、うん。娘さんはたまたま違う怖いモノでも見たのでせう。
彼女がトラウマにならないようこっそり祈りつつ、あたしはため息を着いてキキに相談する事にした。やっぱり若い女の子の意見を聞いた方がいいからね。
「悩んでるほどってほどでもないんだけど。あのね、あたしのいたニホンじゃあ、この時期にあるものを異性に贈る習慣があるの。それは日頃の感謝を込めたり友情を込めたり……いろんな意味があるんだけど。
一番のメインが……その……」
あたしが言いよどんでいると、キキは話の流れでピンときたらしい。
「要するに、愛情表現が一番ってことね」
彼女に指摘されてしぶしぶ頷いたけれど、頬があり得ない位に熱くなった。