異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
数時間くらい経ったかな。
あたしは今、厨房らしき石造りの部屋で、ひたすら野菜を洗ってました。
制服じゃあ目立つから、洗濯物からちょっとだけ服を失敬。
グレーのワンピースを着てつぎはぎだらけのエプロンを身に付け、三角巾で縛った髪を隠せば……ハイ、1人の下働きの出来上がり。
モブ化のスキルを発動させながら下働きの中に突っ込んだら、ほどなく野菜洗いを命じられた。
カゴいっぱいのジャガイモに似た芋は、まだ土がついて収穫したて、って感じ。
桶に組んだ水で土を丁寧に洗い流して、綺麗になった芋を見てふと気になった。
(なんかあんまり元気そうに見えないな)
元々お芋を栽培するのは幼稚園の頃からやってたからわかる。ジャガイモは痩せた土地でも栽培できて、たくさんの収穫が可能だ。
けど、連作障害ってのがある。同じ場所で同じ作物を栽培してると、病気や虫が発生して成長しにくくなったり収穫が減ったりする、困った現象。
もしかするとこのお芋さんはそのせいだろうか?
周りを見渡してみれば皆さんとても忙しそう。買い付けに行く人に伝えておこうと思ったけど、それどころじゃないか。
(仕方ないか。またチャンスがあれば言おうっと)
サボってると思われたのか、他の人に睨まれてしまいましたよ。慌ててゴシゴシと芋の泥を洗い落とした。