異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
『ねえねえ聞いた? お給金減らされるかもしれないって』
『え、そうなの?』
『うん。家令様が話してたのをキキがこっそり盗み聞きしたらしいよ』
食事をしながらのお喋りは、万国共通らしい。
あたしは固い黒パンを具のないじゃがいものスープに浸けながら、耳をダンボにして周りの会話から情報を集めた。
『ここで働くと箔がつくから、結婚相手を選ぶ時に有利になるけどさ~これ以上お給金減らされるとキツイよねえ』
『新しい家令のジョシュさんが倹約しろってうるさいからさ。侍女長のミルミさんも、人手を減らすために働きぶりを見て選別してる……って言うしね』
はあ、とため息を着く彼女達は、どうやら近隣の大地主や地方豪族の娘さんらしい。下働きとはいえ、この離宮で働けばそれだけでステータスになり、結婚の条件が格段によくなるとか。
つまるところ、婚活兼花嫁修行みたいなものか。
なんてぼんやり考えていると、とんでもないひと言が耳に届いた。
『本音は王太子殿下に見初められることだけど、お顔を見る事すら難しいもんね』