異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
下働きに潜り込んだあたしは、数日ですっかり周りに溶け込んだ。
3日経った今じゃ“ユウ(仮名)”と呼ばれ、元からいるような顔をして働いてる。
掃除は侍女(要するにメイドさんね)達の仕事だから、あたし達は雑用や力仕事の裏方をこなす。
そんな中でキキという相部屋の女の子と仲良くなった。
彼女はあたしより一つ年下なだけだけど、とてもしっかりしてる。栗色の髪の毛を左右に三つ編みにしてるけど、寝る時にほどくとふわふわのくせ毛でとってもかわいらしいんだな~。
小柄でそばかすが悩みのごくごく普通の女の子。他の下働きの人は最低限ある程度収入のある裕福な家の娘だからか、なんとなくうまが合わない。
キキとのお喋りは楽しい。
けど、やっぱり夜に寝静まった後ふと寂しくなる時がある。
ここは自分のいるべき場所じゃない……と思うと、どうしようもない孤独感に襲われた。
そんな時はお母さん達の言葉を思い出す。
“忘れないで。あなたたちはいつまでも私の子どもなんだって。私はいつでもあなた達を想っていることを”
(うん、お母さん。あたしはいつどこにいてもお母さんの娘だよ。絶対に忘れない……)
みんなに会いたくなる時もたまらなく懐かしい時も、唯一自分が異世界の人間である証の制服を胸に抱いて眠った。