異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
下働きをすればお給金を頂けるから、それをコツコツ貯めながらなるべく情報を集めて、日本へ帰る準備をしないと。
(やっぱりあのキラキラ王子さまを捜すのが手っ取り早いのかな)
あたしがここに来るきっかけになった彼を度々捜してたけど、働く人たちの中にはいない。家令のジョシュさんは五十代の白髪だし、他にいる警備の中にあんな綺麗なプラチナブロンドを見たことは無かった。
「よ……よいしょっ、と!」
今日も今日とて力仕事。
水汲みは大切な仕事だからモタモタしたくないけど、井戸から水を汲むこと自体慣れてないからなあ。
両手の桶いっぱいに水を汲むと、よろめきながら運ぶ。片手で10キロ以上あるとさすがにキツいわ。
よたよた歩いてると、急に片手の重みが消えた。
驚いてそちらを見ると、見慣れた仏頂面が目に入る。
「重いだろ。片方持つから」
「あ、ありがとう」
「別に、いい」
お礼を言っても彼の表情に変化はない。無言でさっさと歩き出すから「待ってよ!」と慌てて追いかけた。