異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
パンを焼くという作業は思った以上に難しかった。
竈(かまど)を使い焼くんだけど、慣れないせいか焼き焦げを大量生産してしまい、責任を取るためあたしの何日ぶんのご飯にする事にした。
『ユウ、わたしも平らげるの手伝うよ! だから、おかず半分こしようよ』
30個もある真っ黒に焦げたパンを目にしたキキは、そう言ってスープとお肉を分けてくれた。
「そんなの悪いよ」
『いいの! わたしね、意外とお焦げ好きなの。香ばしくていいじゃない』
キキは緑色の大きな目でウインクをし、あたしを励ましてくれる。
『誰だって初めてに失敗はつきものよ。次は上手くいくように一緒に頑張ろうね』
ポンポンと背中を叩いてくれるキキの手の温かさに、不覚にも家族を思い出して泣きそうになる。
「うん、ありがとう。次は頑張ってみるね」
『最初の火力が強すぎだ。薪を一度に突っ込まず、徐々に増やせばいい』
いつの間にか隣に座ってたライも、独り言みたいなアドバイスをくれながら、焼き焦げパンを黙々と平らげてくれた。