異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
《……タスケテ》
「えっ?」
誰かに呼ばれたような……そんな気がして、切羽詰まった声が気になり斜面を駆け下りる。
『ユウ、どうしたの?』
「誰かが助けて、って言ってた!とりあえず行ってみる」
キキの問いかけに素早く答えた後、あたしは手にした紙を下に敷いて斜面を滑り下りる。
もし倒れてたりしたら、一刻の猶予もないかもしれない。
胸の傷が、なぜかじくじくと痛む。
あたしもこの傷を負った時……怖くて不安でたまらなかった。血が止まらず、体温が下がっていく恐怖。
本能的な、死への恐れ。
そんなつらい目に遭っている人がいたら、何とかしてあげなきゃ!
斜面を降りて立った先は、麦畑だった。
三人で必死に捜してみたけど、それらしき人はいない。空耳だったのか……とガックリした。
2人にひたすら謝りながらも、麦畑が気になって仕方ない。
麦の苗はまだ青くて、穂が実ってそう経っていない。
けど、なんだか元気が無さそうに見えた。