異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
伝承の姫って、なんじゃらほい?
「……はあ~~」
『どうしたの、ユズ? 退屈とか?』
「そうじゃないわよ」
キキの問いかけに投げやりに答えたあたしは、長いスカートの生地をつまみ上げ、足首から下を眺めて再びため息を着いた。
「なんでこんな目に遭うのかな~って……自分の不運を嘆いてただけ」
『どうして? すっごく素敵なことじゃない。ティオン王太子殿下にプロポーズされたんでしょう。殿下には数多の貴族の姫や諸外国の王女が求婚してるのに、一切応じて来なかったんだもの。その意中の人が平民の身分だったユズなんだもの! あり得ないくらいの幸運じゃない』
キラキラした瞳のキキは、紺色の制服を着て白いエプロンを身に付けてる。……そう、彼女はあたし付きの侍女見習いになったんだ。
離宮に留まれって言うなら、キキと一緒にが条件よ! って強気で押しちゃったんだけど。
今履いてるのは、飾りが何もないシンプルなヒール。ごてごてした装飾は肌に合わないから、一番地味なドレスや靴を選んだ。
それでも慣れるはずないわ。急にお姫さま扱いされたって。元々はしがない庶民ですから。