異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
一瞬――
音が聞こえそうなほどに、緊張が高まった。
ティオンの言葉を、ライベルトはどう受け取ったのか。
痛いほどの沈黙が続き、風の音だけが耳に届く。
やがて、ライベルトが剣を抜くと……それをティオンの肩に当て、軽く叩いた。
あたしには意味がわからないけど、きっと重要ななにかがある。
『ティオン、君の謝罪を受け入れよう。だからもう立て』
『……ありがとう』
ライベルトとともに立ち上がったティオンは、どことなく晴れやかな顔をしていた。
やっぱり、どこか悔いる事があったんだな。あたしが知らない点でずっと謝りたかったのかも。
王太子という重い身分になると、それまで許されていた事がかなり制限される。誰よりも歯がゆい思いをしてたのは、ティオンなんだろうな。
「じゃあ、仲直りしたことだし。昔を懐かしんで……えいっ!」
あたしは近くにあった木によじ登りだした。
『ユズ! いきなり何を。危ないから降りておいで』
「平気だし! 下ろしたかったら追いついてみなさいよ~だ」