異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
「はあ~外に出たい。窒息しそうだわ」
新年祭まであと半月。追い込みで忙しくなるのはわかるけど、こうも自由がないとげんなりする。
『仕方ないわよ。新年祭はこの国のみならず、ホレイン教を信ずる国には大切な行事ですもん。太陽の再生を祀り、民と国の安寧と繁栄を願うの』
お茶を淹れてくれるキキの話を聞き、日本の年末年始とは違うんだな……。とちょっと思うけど。結局、願う気持ちは一緒ってことか。
厄除けや厄落としってのは日本独特の考え方かもだけど。
「セイレスティア王国にも“穢れ”みたいな考え方はあるの?」
『あるわよ。1年間体に溜まった良くない闇を、生まれ変わった太陽で祓うの。それで無病息災や幸運を願うのよ』
なるほどねえ。やっぱり悪いもの良いものって考え方は世界は違えどあるんだな。
テーブルに顔をつけてへばってるあたしに、キキから意外な提案がなされた。
『……そんなに退屈なら、一時間だけ抜け出さない? あたし、ちょうど市場に買い出しに行くの。ユズもどう?』