異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
ケンカは両成敗が一番ですな。
「うわぁ! すごい。すっごく賑やかだ~」
フードを被ったあたしは、ほんの少しだけそれをずらしてみたけど。
大きな手で、元通りどころかもっと深く被らされた。
「ちょっと、前が見えないんだけど!」
『あなたが自覚されてないからですよ』
硬い声で、お付きの護衛が仰いました。
「別に……あたしみたいな地味で平凡な女、いくらでも替えはあると思うけど」
ブツブツ不満を呟こうが、護衛は淡々としたものだった。
『そうでないから、あの方も困っているのですよ』
あの方……まず間違いなくティオンの事だろうな。
あたしは目の前にいるライベルトを見上げ、その仏頂面を崩してみたくなる。
「ライベルトは、あたしがいなくなったら寂しい?」
『個人的な問いには、ご回答出来かねます』
素っ気ない。
そもそも、ライベルトはキキと同じく気安く話せる相手だったのな。
ちょっぴり残念だけど、外出を禁止されているのに、わざわざ護衛を引き受けてくれたんだもんね。