異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
それより、ちゃんと目的のものを買わなきゃ。
離宮ではキキがあたしの身代わりをしてくれてるんだし……これ以上迷惑を掛けないために、時間までに戻らないと。
「えっと……買い物はハーフン1キラか」
ハーフンは干した果物で、ナッツとブドウの中間みたいな緑色の食べ物。これをケーキに入れると綺麗だし、美味しいんだよね。
『果物屋はあちらにありますよ』
流石に勝手知ったるなんとやら。ライベルトは迷うことなく目的地を見つけた。
「案外近いんだ。それじゃあいきましょ……」
あたしが一歩を踏み出す前に、男性がぶつかってきた。
一瞬、目の前が真っ暗になり足が縺れる。
よろめいたあたしを支えてくれたのは、ライベルトだった。
彼はしばらく何かを考え込んだ後、自分のマントをあたしに被せた。
『……まだ、苦手でしょう。不本意かもしれませんが、私に隠れていてください』
ライベルト……あたしが人混みが苦手になった原因……憶えててくれたんだ。
あたしは小さくありがとう、と呟いた。