愛しのパシリくん
「ふー……」
やっとひとりになれた私は、大きくため息をついた。
―…これで、やっと伊藤の顔を見に行けるよ。
そう思うと顔がニヤけて、さっきまでの怒りもどこかへ行ってしまった。
でも、すぐに顔を元の無表情に直す。
だって、こんな顔で伊藤に会ったら私の気持ちがばれちゃうじゃん。
伊藤の顔を見る度、ニヤけそうになるのを我慢してるんだよ?
この気持ちは、伊藤だけにはバレたらいけないんだ。
そんな思いを胸に刻んで携帯を取り出すと、伊藤を呼ぶ。
「…もしもし。」
短い呼び出し音が切れて、伊藤が出た。
……元気のない声。
…何かあったとか?
でも、とりあえず顔が見たいのでパシることにした。
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