愛しのパシリくん



私の背後で、ガサッと芝を踏む音がした。


暗闇の中で、徐々に近付いてくるシルエット。



侵入者かと思った私は、警備員を呼ぼうと身を構えた。


その前にもう1度、姿を確認しようと目を凝らす。



平均くらいの身長…


この身長は、伊藤と同じくらいかも。


そしてあの歩き方、何か見覚えあるような。


あ、そっか…


伊藤に似てるんだ。



でも、まさか伊藤はこんな所にいるはずないし―…



「い……とう?」


試しに呼んでみた名前。


多分、違うって分かってるけど呼んでみたかったの……



「―…成瀬先輩、今日誕生日ですよね?」


いきなり、シルエットの男の子は私の名前を呼んだ。


…伊藤そっくりの声で。



……もしかして、本当に本物の…伊藤?




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