愛しのパシリくん



伊藤は、真面目な表情を崩さずに言った。


「…使えるパシリじゃ、もう嫌なんです。」



伊藤の言ってる意味が、全然分かんない。



一緒にいて楽しいって思ってたのは私だけ?


伊藤は、私の怒りを治めるために隣にいただけ?



「うるさい!あんたは私のパシリなんだから!!」


「オレに戻って来て欲しかったら気付いて下さい。」


「……何のこと?」


「―…ヒントは、その花束。」



―…花束…?


手の中にある真っ赤な花束を見つめる。



…悪いけど綺麗に咲いたバラにヒントが隠されているとは思えない。



「…じゃあ。」


そのまま、その場から立ち去ろうとする伊藤。



……まただ。


伊藤は、また私を置いて行こうとしてる。



「…伊藤っ!!口で言わないと分かるわけないよ!!」



そんな私に伊藤は―…


「頑張って。」



それだけ言うと微笑んで、私の前から立ち去ってしまった。



残されたのは私と…伊藤のくれたバラの花束だけ。




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