Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】
「血液の中にはな。
 嘔吐を促す物質が入っていて、例え吸血鬼でもそのまま飲めないんだ。
 大槻軍医の作ってくれた、クソ苦い薬の『ハジ』で嘔吐を無理やり抑えるか……
 血を飲む相手を抱いて、そもそも血液の成分を変えてやらない限り、血は飲めない」

「……相手を、抱く?
 べつに、僕は残月に抱きつかれたって、構わないけど……?」

 ……判ってない。

 俺はため息をついた。

「もし、貴様の血を飲む気になったとしたら。
 貴様の尻の穴に、俺の竿をぶち込んで犯すって事だ。
 ……どう言う事か判ったか?
 工藤に男色趣味はないだろう?
 ここまで、散々苦労した挙句。
 そんな、男としては最低な屈辱を受けて、死んで行きたいのか?」

 俺の言葉に、工藤の顔が、まともに青ざめた。

 が。

 工藤は、ぎゅっと拳を握って言った。

「……いいよ。
 ……して」

 工藤の声は、震えていた。

 しかし、また、半身を起こすと、俺の顔をまっすぐ見て、はっきりと言った。

「僕を犯して、血を吸って、いい」

「……何、莫迦なことを言っているんだ?
 俺は、嫌だ」

 冗談じゃない。

 俺は、また寝かしつけようと、工藤の肩を掴んだ。

「……ここに来るまで、貴様と俺は一緒に戦ってきた。
 貴様は、鉛の弾が振る中を、ずっと俺の背後を護ってくれていたろう?
 それだけじゃない。
『ハジ』の力を借りて、工藤からは何度も血を分けて貰った。
 もう……十分だ。
 名を貰わなくても……
 これ以上血を貰わなくても……
 日本に帰り着くことが出来たなら、貴様の妹の面倒ぐらいは見てやるさ」
 
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