さがしモノ
「ねー。なんか騒がしくないー?」
繁華街は予想通り混んでいたが、
なぜだかざわざわした声の中に悲鳴が混じってる。
「う、うん。なんかあそこ人だかりできてない?」
そう言って転校生ちゃんが指差した先には、確かに人が群がっていた。
「ちょっと行ってくんねー」
わたしは自分の野次馬精神に動かされ、人ごみに近づいていく。
「え!?ちょ、ちょっと待って!」
怖いのかなんなのか、引け気味の転校生ちゃんがそわそわした様子でわたしの後を追ってくる。
バキッ
ドカッ
「ねー、誰か警察呼んだ!?」
「これ、ちょっとやばいんじゃないの」
ざわめく人波をかき分けて前へと進む。
「すみません。すみません。」なんて言いながら転校生ちゃんも付いてきていた。
「こりゃ、喧嘩だねー」
「そ、そうだね。大丈夫なのかな?」
転校生ちゃんがそう言ったところで、ちょうど現場が見えた。
「んー。大丈夫そうではないね。」
そこには2人の高校生がいた。
1人はもうボロボロで、立っているのがやっとという状態。痛々しい頰は腫れ上がっていた。
一方、もう片方は返り血を浴びながらも平然と立っている。
しかし、目が、冷たい。
思わずぞっとするほどに。
人間味を感じられない冷ややかな目は、ボロボロの相手を見下している。
きっと、ただ野次馬できたわたしはこの光景を見たら即退散する。
警察が来てめんどうなことにはなりたくないから。
ーーなんて言ったってさ。あきらかに加害者の方が、うちの制服着てるんですもん。