だから雨は嫌いだ
「夏世!」
びくっとしてこっちをむいた夏世は煙草をくわえていた。まだ12歳だ。法律違反以前にまだそんな小さな体で煙草を吸っていた。
「夏世、煙草なんか吸ってんの?」
「うーんまぁなんというか・・・彼氏ができて彼氏が高校生でね、煙草吸っててそれでなんというか、吸い始めちゃった!」
笑いながら訳が分からないことを言ってた。煙草は駄目だ。ばれたら大会も出れない。先輩達は頑張ってる。夏世の体も心配だ。煙草は駄目だ。
「夏世やめなよ、煙草。」
「だってコレ1ミリだから体にもあんまり害はないし平気だよ!」
「息続かなくなるよー?」
「ゆかり吸ってみない?ゆかり煙草にあいそう!」
「えー。じゃあ1本だけ!」
「ゆかり!」
「かなえにもあげる!」
「え」
「1本だけ!」
共犯者を求め、罪の意識を減らす犯罪者。今その気持ちが夏世にはわかると思う。たった1回の過ち、その誘いを断りきれる人も止める人もいなくて煙草に火をつけた。むせて笑ってたった1本だけ吸った。
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