だから雨は嫌いだ
目眩がした。目の前の男は確かに父なのに。誰だ。私のお母さんはあんな人じゃないし、私は弟なんかいない。誰だ誰だ誰だ？
「あなたご飯食べていく？」
私はゆっくりと父の背中を目指した。
「そうしようかな。今日の夕飯は？」
父は門を開き中へはいる。
「今日はエビフライだよ！スグル手伝った！」
私は閉じられた門の前にたった。
「エビフライか！いいなぁ！」
「お父さん」
私の声に肩が震えている人が2人いる。
「うちも今夜エビフライだよ？」
精一杯笑ったのに父が振り返った瞬間に涙が溢れて止まらなくなった。壊れた涙腺に任せて目から涙のような水のような液体をとめどなく流し続ける。
「かなえ・・・」
「私今買い物に行ってきたの。パン粉がないから買ってきてってお母さんがね。」
ただの簡易施錠しかない門が果てしなく大きな壁を父との間に作っていた。目から溢れる水分が止まらなくて前が霞む。父が分からなくなる。間違いならいいのにと思っていたのに、そう思っていたのに目の前の男は私の名前を父と同じ発音で呼んだ。
「かなえ」
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表紙・目次

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