虹の架かる橋
「ねぇ、どこ行くの?痛いよ。」


私はマサに訊くが、腕を掴まれたままマサは何も言わなかった。


ひたすら、マサに引っ張られる私。


マサにとって、私の気持ちなど、どうでもいいの?


そして、渋谷の人通りの多い道を抜け、マサはタクシーを拾った。


そして、タクシーの中で「腕痛かったね…。でもこうしないとケイは話聞いてくれないでしょ?」とマサは言って、自分の携帯でユタカに電話した。


「ごめん、ケイと話するからそっち帰らないや、今度金は払うから。」と言って電話を切った。


私の意志など、マサは訊いてもくれない。


そんなマサの話を、私は聞く気になれなかった。


こんなカタチで再会したくなかった。


私の心の中にある一番大切な想いが、壊されて往く様で、切ない気持ちになっていた。


マサは、タクシーの運転手に行き先を告げているが、そんなのどうでもいいと思えて、目的地を聞くのを忘れてしまった。








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