虹の架かる橋
タクシーは金曜日の夜だというのに、渋滞もなく軽快に走っている…。


東京の道はあまり詳しくないから、一体どの道を走ってどこに向かっているか見当もつかなかった。


窓の外の流れて見える光景が、私が過ごした5年間のように思えてしまった。


ただそこにある場所…。


そこにあって、意味はあるのかな…。


私の5年間は、マサの思い出を毎晩のように思い出して、過ごしたようなものだった。


再会なんて考えてみなかったし、ましてや今、この時間にマサと一緒に居るなんて想像もしていない。


話なんかしたくない……。


もう過去の苦しみに戻るのは耐えられない。




心の底からマサを愛しているから、思い出を壊さないで……。


私の全てだった時間を汚さないで…。


そう思えてしまう。


今、どんな内容を話したってきっと、修羅場になるに違いない。


何を言われても、私は辛かった時間を忘れられないだろう。



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