虹の架かる橋
ねぇマサ…?


あなたはこの道を、何を考えながら歩いていたの?


この景色を見ながら、日本に居た私を思い出してくれましたか…?


私に逢いたい、って思ってくれましたか…?


逢えない寂しさを感じてくれましたか…?


私は記憶の中にいるマサに問い掛けた。


そしてマサの笑顔を思い出して、答えのないまま、景色に溶け込むようにゆっくりと橋の方へ向かった…。

歩いている途中で、何組かのカップルとすれ違い、そのカップル達の幸せそうな顔を見て、「今日は、あの橋に虹が掛かってるのかも…?」と思えた。


橋が近くなるにつれて、心臓が少し緊張するのがわかった。


もう少しなんだ…。


心の中のマサと、サヨナラする時間は…。


そう思いながら、1歩1歩あるくと、視界に入る背の高い森林が、急に無くなり、圧迫感があった道が広々と見渡せるようになった。




「あっ…。」


広く見渡せる景色の中に、見覚えのあるあの橋が、私の目に映った。


写真の角度ではないが、確かにあの橋だった。


その橋を見た瞬間、私の目には、じわりと涙が浮かんできた。


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