虹の架かる橋
私は、マサをずっと見ていたかった。


おそらく、マサと一緒に過ごす夜は最後だと思う…。


この時間を大切にしたい。


私の記憶の中で、幸せの時間を過ごした、と思えるように。


マサの声も、笑い方も、話し方も体温も全て忘れたくない…。


私達は何度もキスをして、朝までずっと起きていた。


マサは「卒検なんだから、少しは寝なよ」と私に言ったが、私は寝られなかった。


ずっとこのまま時間が止まったらいいのに…。


そう思わずにはいられなかった。


無惨にも時計は7時を指していた。


「支度しないとね…。」


私が小さな声で言った。


「だね…。」


マサも同じように、小さな声で言った。


マサは私の手を取って、自分の方に引き寄せた。


お互い何も言わずに抱き締めあった。


そして、私の耳元で「俺を好きになってくれて有り難う」と言った。


それを聞いた私は、涙が溢れ出した。


その時、これが最後なんだ…。と痛感した。


「有り難う。」


私もマサの耳元で言い返した。




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