妖勾伝
アヤに張り付き、零れ落ちる闇達。


半身起こしたアヤの躰は、まるで頭から水をかぶった様にヌラヌラと影を反射させ、全身濡れて見える。




ほどくように頭を一振りすると、

それは艶やかに、スッと整ったアヤの輪郭をなぞり滴った。




妖艶に、むしゃぶりつきたくなる口元から息が漏れ落ちる。





その様子を見て、ヒラリと屋敷の屋根上から降りてきたレンは、弾かれる様に一寸先で足を止めたのだった。











「…レン」



ゆっくりと視線を上げながら、その場で足を止めたレンにアヤは顔を向けた。



その絡み見る視線に、レンの胸がドクンと大きく一つ打つ。











「レン、
お前なぁ……


頼むから、もう少し手加減してくれよ。

俺ごと、闇に葬り去る気かーーー」




「……アヤ…」









いつもの、飄々としたアヤの態度。

その一言で安堵の息を付いたレンを見て、はにかむアヤは優しく頬を緩めた。



「心配かけたな。」










アヤの言葉。

優しく、幾重にも折り重なる。



見えない不安と手にした安堵で、複雑に絡まった気持ちを更に掻き乱され、

思わずアヤの腕を引き寄せたレンは、その安らぐ胸に顔を埋めてしまったのだった。



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