妖勾伝
「それにしても、どうして此処に?
隣町で落ち合う筈だっただろ。」

「ちょっと、気になって…
けど、来て正解だった。
もう少しわちが来るのが遅かったら、犠牲者が増えるとこだったろ。」


眉間に皺を寄せ、傍で転がっている男達を睨む女。

その顔が少し可愛くて、思わず吹き出してしまう。


「私に殺られるとは、どういう意味だ。
無駄な殺生はしてないつもりだが。」

鋭い視線が、此方に投げかけられる。

慌てて両手を挙げ、怒りの矛先が此方に回ってこない様に後ずさった。


「まぁ、無事で良かった。」

「男達が、だろ。」

少し拗ねた態度が、笑いを誘う。

たまに見せる、年相応な表情。

笑いを堪える男に向かって薄紅色の舌先を見せ、アッカンベーをした。






「先を、急ごう。
レン。」





< 11 / 149 >

この作品をシェア

pagetop