妖勾伝
曲々しく放たれる、闇の気配。

目も当てられない程に捻れ歪み、邪気を露わにしている。






「……っ!」


見えない影に押され、レンは踏みしめていた足をジリと一歩後退った。











惨い光景ーーー



それは、

寄り処を失い、先程まで地を這いずり回っていた力無き者達が、

その悪しき触手の懐に飲まれる様に深く吸い込まれ、アヤとレンの目の前で姿をみるみると変えていくのであった。






騒ぎ散らす、
闇達の叫び声。

軋みにも似た慟哭に、乾いた地面が揺れる。









「さて…

お出ましだーー」














濃くなってゆく闇をジッと見つめ、アヤはそう呟いた。









先刻よりも、倍近くまで膨れ上がった化け猫の躰。

地を這いずり回っていた者達をすべて吸いつくし、その巨駆を唸らす。



目の前にした姿に、
薄闇の中、その呟いた声が少し震えているのがわかる。

アヤ自身でも、可笑しさがわく程…



こめかみに、
厭な汗が、ジワリと滲んだ。


< 112 / 149 >

この作品をシェア

pagetop