妖勾伝
腐臭を漂わせながら、めくれあがる躰の節々。
ズルズルと、
引き摺られていく。
耳障りな音をたてて、化け猫は重たげにその首をもたげた。
ニ゙ァァァァァーーーーーー
化け猫の嘶きの様な声に堪えきれず、レンはとっさに耳を塞ぐ。
耳まで裂けた、血生臭い口元。
甲高く一鳴すると、紅くたぎる眼玉が、二人を射止める様にギョロリと見開かれた。
「ーー何が、
『幸せ』だ…」
わなわなと、震える肩。
化け猫が一動する度に、その巨駆がボトボトと零れ爛れてゆく。
「そんな、
くだらん感情に流されおって……」
珀に注がれる視線には、蔑みが溢れ出している。
そう、
愚かな人間へと向けられる、冷ややかな視線ーーー
「くだらん、だと…?」
その言葉に、
レンは眉を顰めた。
ギシリと、奥歯を噛み締める。
「そうだ、
実に、くだらん。
『幸せ』とは、
この世を漆黒の闇に染めあげる事…」
化け猫はそう云い、
悦を含めるその紅い眼をグラリと歪ます。
「そしてーーー
無能な人間共を、
すべて世から排除する事こそ、我等ら闇の最高なるよろこびなのだ!」
そう云って、天高く夜空に向かって振りかぶられた、太い腕。
鈍く光る鈎爪が、
ユラリと宙を裂く。
足元で竦み立つ三人に向けて、
その容赦ない化け猫の鈎爪が、瞬に振り降ろされたのだった。
ズルズルと、
引き摺られていく。
耳障りな音をたてて、化け猫は重たげにその首をもたげた。
ニ゙ァァァァァーーーーーー
化け猫の嘶きの様な声に堪えきれず、レンはとっさに耳を塞ぐ。
耳まで裂けた、血生臭い口元。
甲高く一鳴すると、紅くたぎる眼玉が、二人を射止める様にギョロリと見開かれた。
「ーー何が、
『幸せ』だ…」
わなわなと、震える肩。
化け猫が一動する度に、その巨駆がボトボトと零れ爛れてゆく。
「そんな、
くだらん感情に流されおって……」
珀に注がれる視線には、蔑みが溢れ出している。
そう、
愚かな人間へと向けられる、冷ややかな視線ーーー
「くだらん、だと…?」
その言葉に、
レンは眉を顰めた。
ギシリと、奥歯を噛み締める。
「そうだ、
実に、くだらん。
『幸せ』とは、
この世を漆黒の闇に染めあげる事…」
化け猫はそう云い、
悦を含めるその紅い眼をグラリと歪ます。
「そしてーーー
無能な人間共を、
すべて世から排除する事こそ、我等ら闇の最高なるよろこびなのだ!」
そう云って、天高く夜空に向かって振りかぶられた、太い腕。
鈍く光る鈎爪が、
ユラリと宙を裂く。
足元で竦み立つ三人に向けて、
その容赦ない化け猫の鈎爪が、瞬に振り降ろされたのだった。