妖勾伝
見下ろす女。






視線の先には、先程激しく躰を重ね合わせた男の姿。



頼りなく萎え、見窄らしくぶら下がっている。







腑抜けた躰を脚で蹴りのけた。



ごろんと転がるその塊は、押し黙ったまま動く事はない。

息すらも…










右肩を一瞥し確認すると、不機嫌そうな声が女の口から漏れた。



「違うかったか…」







その肩にある痣は、女と交わる前と変わらず、その場で座していた。









無意識に手が首もとにまわる。


首から背中にかけて、大きな火傷の痕。

知らず知らずのうちに、触れる。





赤黒く焼き付いたその痕は、蜘蛛の様に女の背中に四肢を張り付つかせ、ジッと息を潜めているみたいだったーーー












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