妖勾伝
「おい。
見ろよ、あれ。」

少し離れた岩の傍で寝そべっていた片目の男、神月(カヅキ)の耳に、

甲高いタツミの声が無理矢理入ってくる。


ーー朝から、うるせぇ声だな…


うっすらと薄目を開け、タツミの指さす方を見る。

「いい女じゃね?」

ヨシも身を乗り出し、山道を下手から歩いて来るその姿を見つめていた。

「そう思わねぇか、
なぁ。」

揺さぶられる肩。

ゴロンと向きを変えて、その鬱陶しい手から逃れた。



「興味ない。
俺は、もっとケツの大きい女が好みなんだ。」




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