妖勾伝
「痛ててててっ!!」

するりとその腕を交わすと、すかさず女は後ろ手に引っ張り上げた。


「先を急いでいる、と云ったでしょ。」


女は更に男の腕をねじ上げ、身動きの取れない男の耳元で優しく囁く。

「行っても、いいかしら。」



その、物腰。

柔らかさの中に隠し持つ俊敏さが、狩をする雌豹のしなかやさを思い浮かべさせた。


苦痛に歪める顔。

突き放すと、そのまま肩を抑え、道にうずくまってしまった。

余程、きつく締め上げられたのだろう。

痛みに声も出ないらしい。


一瞥する女。

その視線は冷たく、骨ごと外してしまえば良かった、とでも云いたげにーーー



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