妖勾伝
「おっと。
困るよ。
こんな事されたら…」

もう一人の堅体のいい男が、逃がすまいと素早く女の手首を掴む。

「さぁ、大人しくしてもらおうか。
この可愛いお手てが、折れちまう前に。」


強く掴まれた手首。

解こうとしても男の力は強く、体格差から考えると、まるで赤子の手を捻るようだ。



手首が、じわじわと赤くなって痺れてくる。

男を睨む女の瞳。

しかし、その悔しさで歪む綺麗な顔が男を楽しませたのだろうか。

にやにやと笑いながら、更に力強く力が込められた。



ーー離せ…


女が、そう云おうとした瞬間。



男の反対の腕が、ねじ上げられた。







「わちの連れに、何か用か?」



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