妖勾伝
「奴等は、
ぬしの仲間なのか?!」

「仲間……」




そのレンの問いに、神月は呆れた様に鼻で笑う。


「あんな外道な奴とは、一緒にされたくないがな……

そう、
貴様が考えている通り、奴は俺と同じ闇に身を潜める輩ーーー


まぁ、
殆ど力を無くした俺の存在に、奴が気付いている様子は微塵も無かったけどな。

貴様等も、此処に足を入れた時から感づいていたんだろう?」











足を入れた瞬間ーーー


アヤとレンが同時に感じていたあの不穏な気配は、やはり闇の気配だったのだ。

地を這い続ける者達の、貪欲な息遣い。




しかし、

それに、確信を持つのが遅すぎた。



感を狂わせる、
あの古屋敷いっぱいに漂う、香の匂い。

頭の奥底を痺れさす、心地良い香…



未だ思い出せないその香の存在に、朱に染まった川面を思い浮かべる。

彼岸花の朱を映した、沢の色ーーー













ズズズズーーーーーンン……






「っ!」


二度目の地鳴りが響くと同時に、

レンは脳裏を弄る淫靡な香りを内に押し込め、神月に掴み取られた腕を無理矢理振り解いた。


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